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「篠峯」醸造元 千代酒造 堺哲也氏を迎えて その2 [日本酒]

懇親会の前に質疑応答編です。

途中でお抹茶のサービスをいただきました。

精米機について
「精米機は、高速精米機である全自動の縦型精米機を使用しています。食べるお米の場合だと90%くらいの精米でいいので、米同士を摺り合わせて精米します。酒米は、そのほとんどが70%以上まで精米するので、砥石に米をぶつけて精米するわけです。実はこの作業は放ったらかしの全自動というわけではなく、付きっきりという程ではないのですが、0.6人から0.7人分くらいの労力が必要となります」

自家栽培米について
「自家栽培しているのは櫛羅のお酒に使用する山田錦です。酒造りにあたる人手に、季節雇いでなく正社員として人を雇用しているので、社員の夏場の仕事として考えています。農家も後継者不足にあって田んぼの維持を望んでいるので、最近では無料で貸してくれます。他の米として雄町等も試みてみたいのですが、収穫時期が遅いため酒造りの仕事との両立は難しいと思います」

米の品質、等級について。またその入手経路について。
「産地、品質、等級に関しては、ブランドとして拘らなくてもいいのかなと考えています。うちの蔵で契約栽培をお願いしている奈良県産の山田錦で、蛋白質が5%くらいです。兵庫県産の特A地区のものでも、6〜7%くらいの物が結構あります。等級を大きくするためには大粒であることが必要で、そのためにより多くの施肥が必要となり、結果として蛋白質の含有量が多くなる傾向にあると思います。高価な山田錦等の入手経路に関してはやはり昔からのお付き合いがあるとかの信用出来る所が中心となります。昔は東北の蔵にはほとんど入らなかったようで、また山田錦栽培のライバルである三重県の蔵にもあまり入らなかったようです。兵庫県の農協との関係も重要です。ひと頃は1俵の60キロで4万程していましたが、だいぶんと下がってはいるようです。それには、徳島県という新しい山田錦の産地が台頭して来ているせいでもあります。うちの蔵で兵庫県産の山田錦を使っているのは鑑評会用のお酒だけで、これは縁起みたいなものもあります。
 ただ、田んぼにまで拘ってやってみるのも面白いと思います。うちの精米機は20俵ばりの1.2トンまで一度に精米できるのです。ちなみに、精米機の事情で最低でも15俵くらい入れて使わないといけません。それらの単位で収穫したお米を使って仕込み分けてみるのも興味深いことです。20俵を精米機にかけると、1.2トンですから、精米歩合50%のお米を得るとして、600キロを取れるわけです。これはひと仕込みの単位としては、採算のとれる最低限くらいの数字です。経済性のあがる1トンの仕込みだとお米が混じってしまいます。細かい作業をしようと思うと、一回でできる作業は少なくなるわけですが、経営面からの問題もクリアしていかねばなりません」

奈良県独自の酒米露葉風について
「現在、奈良県独自の酒米興しに関しては大きな動きはなく、地域による温度差もあるようです。ところで、雄町米というお米は遺伝的に一番古いお米で、他との掛け合わせもなく、山田錦でさえ交配種であることを考えると、とても貴重な酒米であるといえます。これらのお米に比べて、目新しく評価出来る品種は今の所これといってなく、ワインの世界でにおいてもカベルネやピノ・ノワール、あるいはシャルドネ種のように古来からある品種が頂点に有り続けている様に、歴史を塗り替えることはなかなか簡単にはできないようです」

ライバルとして意識する蔵元
「同じ奈良県にある蔵元で親戚でもあるのですが、、『睡龍』の久保本家さんや『百楽門』の葛城酒造さん、地元の御所市で言うと『風の森』を醸す油長さん、後は全国でも若い造り手が蔵に戻って来ている所も気になります。また、梅の宿さんも目指す所はやや違いますが、別の意味で意識しています」

アルコール添加酒に関して
「リストにある様に、鑑評会用の大吟醸酒以外は、一種類をのぞいて純米系統のものばかりです。ただ、うちはオール純米蔵ではなく、アルコール添加酒も造っています。私自身の見解として、アルコール添加した本醸造酒や吟蔵酒を、醸造酒ではなく混成酒、いうなれば梅酒みたいな別のカテゴリーに属するお酒として考えています。ワインでいうシェリーやポルトみたいなものですね。アルコール添加の技術自体は米の無い時代の産物として出来上がってきた歴史的なものですが、ただ、そのアルコール添加の方法が、皮肉にも純米酒に近づけようとする技術として発展してきています。アルコール添加が偽物を造る技術として捉えられがちですが、そうではない別の価値があるはずで、純米大吟醸酒も大吟醸酒も両方をもありであり、違う二つの個性を持つお酒として考えればいいと思います。それと、通常行われるアルコール添加は廃糖蜜原料が主流ですが、うちの蔵では海外のものにはなるのですが米原料のものを使っています。あまり違いはないのですが、米アルコールの方が辛味を感じないような気がします。また出来上がったお酒から調べると、米と他の由来の原料とでは炭素配列が違っており、廃糖蜜原料を使ったものは調べれば直ぐにわかります。逆に米アルコールを添加した場合には純米かそうでないかはお酒を分析してもわかりません。同じ様に酒粕や米ぬか等を再利用した場合にも解りませんね。そこには、どこかしらアルコール添加そのものに対する後ろめたい気持ち、悪いことであるという認識があるからだと思います。そこにごまかしがあったりしては駄目なのは当然ですが、ひとつの個性あるお酒として考えればいいのではないでしょうか。ただ、米アルコール使用の有無や精米歩合等、スペックで飲み始めるとお酒難しくなるので、みなさん楽しんで飲みましょう」

以下は追記ですが、堺さんの言葉ではなく、私の付け足しです。

ブランド米について
以前岡山県の蔵元である辻本店さんの社長に聞いた話で、そこそこ影響力のある地酒くらだと産地指定米の表示を遠慮して欲しいと言われたりするそうです。農協の方から一部の農家のみのお米を褒めて、取り上げられ無い人が出て来ると、微妙にやっかみとかでたり、育成の難しい酒米栽培への意欲を削いでしまうのでということだそうです。これはある意味とても日本的な護送船団方式というか、出る杭になるな的な風潮を反映してるようで、いい物を良いと素直に褒めれる方がいいのでは思います。長野県等で行われている原産地呼称制度による農産物等の品質、ブランドの保護は、まだまだ色々と問題はあって道は険しいのでしょうが、是非とも成功し全国的な動きとなって欲しいものです。

米だけの酒について
酒粕や米粉等を再利用した米原料だけのお酒に対する、米だけの酒の表示に関しては、財務省から新たな規制がかけられていて、精米歩合の規制が緩くなったかわりに、麹使用の歩合の規制がかけられるようになりました。特に純米酒等の特定名称酒に関しては15%以上の使用が義務付けられています。確か、去年の春くらいのことですね。


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SHINO

お抹茶に日本酒・・・
和の情緒ですね。
日本酒って本当に奥がふかいのですね。
ああ、飲みたい~~~
by SHINO (2007-10-12 18:35) 

GO

うぉ!百楽門。
大好きです。
僕だけだと思うんですが
トンカツにあうんです・・・ソースなしで。
by GO (2007-10-13 10:10) 

つーたん

SHINO様、いつも有り難うございます。
奥を深くするかどうかはその人自体です。
お気楽に楽しみましょう。

GO様、いらっしゃい。
しっかりした酒質のお酒は、
揚げ物なんかとも好相性ですよね。
チーズ入のチキンカツにも合いますよ。
by つーたん (2007-10-14 08:25) 

お抹茶好き(^^)/
by (2007-10-14 21:11) 

つーたん

魔女様、隣にそえた和菓子もここの手造りなのです。
by つーたん (2007-10-19 13:30) 

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