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平成19年度大阪国税局清酒鑑評会 [日本酒]

11月14日に催された大阪国税局鑑定官室開催の
清酒鑑評会の公開出品に行ってきました。

その日は水曜日で仕事が休みなこともあり、全出品酒216点全てを、
ゆっくりと利き酒することができました。
飲み込まずにに吐き出していたとはいえ、いつもより集中して確りと味わった分、
途中何度も舌がひりひりと麻痺して痛み、涙ながらの利き酒となりました。

出品区分が6つに分けられているこの審査会、
吟醸酒部門82点、燗酒用清酒部門86点、生もと系清酒部門23点、
長期貯蔵酒部門22点、低アルコール及びその他部門3点の内訳です。

このような鑑評会に何度か参加して来て思うのは、
これだけ多くの点数を利く際には、生酒がそのインパクトの高さからいい印象を
抱くとことを想像していたのですが、かえって生の香味が強い物はくどさを感じてしまい、
口中に後味が残りあまり美味しいとは思えず、
またいつまでも残る余韻が他のお酒の評価の邪魔にもなったりします。
今回はほとんどが火入れをしたものであったようですが、
幾つか生老ね香の残るものがあって、それらは採点除外の対象ですね。
褒め殺したいお酒、その美味しさを誰にも伝えたくないお酒、
色々とあったのですが、個々のお酒の評価はしないでおきます。

審査そのものは監査室を中心に専門家の方々で既に10月中に終えていて、
今回は鑑定結果を含めた出品酒の一般公開という位置づけになります。
なので、写真でご覧の通りブラインドでは無いので、目から入ってくる情報で、
ある程度先入観が入り込んでくるのは否めません。
普段から気になっている蔵のお酒には、やや厳しい評価をしてしまうのかもしれませんし、
逆に、蔵の内状を知っていたりもすると甘い点数を付けたりもしてしまいがちです。

そこに出品されたお酒から蔵の全体像までを推し量るのはとても難しいのですが、
ただ、そこそこの規模になるお酒を生産している蔵程、
毎年のお酒造りの方向性にブレが少ないといえる気がします。
小さな蔵程、その経営方針を簡単に代えれると言ってしまえばそれまでですが、
工業的な大量生産するパック酒が主体のメーカー程、こういった鑑評会においては、
そのお酒造りに対する哲学の輪郭に触れることができると思います。
本末転倒ともいえそうなのが、消費者が一番買ってくれているお酒の品質の
穴埋めのために、鑑評会での結果に血眼になっている時代もあったはずで、
まるで鑑評会審査での金賞受賞が、三増酒製造への免罪符になっていた
というのは穿った考えをし過ぎでしょうか。

ところで、みなさんが抱く地酒蔵のイメージとはどういった物でしょうか。
手造りであること、小仕込みであること、周りに田園風景が広がること、
米造りに挑んでいること、古い甑の利用や生もと造り、あるいは槽でもろみを搾ること、
濾過処理しない井戸水を使っていること、あるいは純米酒のみを造っていること等々、
世間での地酒にまつわるイメージは数多あって、
実際の所それらは時代とともに遷り変わってもきています。
いうなれば、ノスタルジックに素朴なイメージでとらえている地酒というものにも、
ある種の計算を含めたトレンドがあって、皮肉にも鑑評会への出品をやめることが、
最近のいいお酒を造るといわれる地酒蔵の有り様とも言われたりしています。

「うまい日本酒を探し求めて」、私はその場所に足を運んでいるのですが、
果たして、自分自身のなかで何を基準にそこにあるお酒を計っているといえるのか。
いつも引用する麻井宇介さんの文章に、「シャブリの典型」という話題があります。
優れたシャブリとみなされる白ワインが有する要素とは何か、
あるいは、これぞ究極というシャブリの典型とはどんなものかという問なのですが、
西洋の足し算の美学、東洋の引き算の美学と言われるように、
一般論ではあるのですが、優れたワインとはその代替の効かない個性にあると言えます。
ならば、「典型」というものを引き出すこと、あるいは典型に覆われている
ことはそのワインのマイナス材料とも言えなくはないか。
これとは逆に、鑑評会での評価を通してそれぞれのお酒造りが典型へと
指向していったと言えるのが、戦後からこれまでの日本酒製造のおおまかな歴史
ともいえそうで、これは原材料の移送条件の違いからくる与件とはいえ、
いい日本酒造りがひとつの同じ理想型を追って来た事実には違いありません。
醸造所が畑の近い場所にあるのは、葡萄原料が収穫後直ぐに発酵を始めるからであり、
穀物を原料とするお酒は収穫された産地と違う場所での醸造が可能です。
いわゆる兵庫県産特A地区の山田錦を競って求める先には、
風土に根ざした個性あるお酒の像とはなかなか見えてはこないわけで、
その意味では、地酒の目指すものとは鑑評会での入賞ではないと言えもします。

朝の11時から始まる会場に到着したのは、少し早い30分前だったのですが、
既に数十人ばかりの行列ができていました。
それが旨い日本酒を求める行列であって欲しいと願うのは私だけではないはずで、
過日の千代酒造社長である堺さんの言葉ではないですが、
地酒の美味しさとは今ここに来て再発見されつつあるのだと思います。


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GO

吐き出してもとっても酔いそうです・・・・
by GO (2007-11-20 07:51) 

つーたん

GO様、いらっしゃいまし。
キリ番ゲットのお祝いに、
大坪商店で利き酒会といきましょうか。
by つーたん (2007-11-22 18:50) 

みるく

今年も鑑評会に行かれたんですね。
これだけ並ぶお酒の数は圧巻の一言ですね。
違いがわかる男ってすごいです・・・。
by みるく (2007-11-25 01:04) 

c-d-m

ところで、つーたんさん
写真のアングルと記事の配置が凄く上達されましたね^^
温燗が欲しくなってきました。
by c-d-m (2007-11-25 18:01) 

つーたん

みるく様、いらっさいませ。
今年は京都の酒サムライは行かなかったのですが、
こちらの国税局のものは行きました。
違いが解った気でいるだけで、
まだまだ不惑には程遠い人生です。

c-d-m様、毎度でございます。
この日の写真は私もなかなか気にいっています。
会場内の蛍光灯の数も多く、光が充分でした。
アングル自体はあんまり意識していませんでしたが、
無心なのが逆に良かったのかもしれません。
by つーたん (2007-12-02 13:49) 

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